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楽天市場の罰則制度から“今後”を考える

楽天市場が罰則制度を9月1日より導入します。違法レビューや配送遅延に対して、厳しい処分を下して、違反者には罰金を科す予定です。

■楽天の「楽天市場」 〝ルール違反〟店舗対策を本格化、規約違反に「点数」、累積で退店も
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2016/06/post-2532.html

 このルールの導入に対して「ふざけんじゃねぇ!」「自由はねぇのか!」と、八つ当たり気味な相談が増えていることもあり、ここで私の持論をまとめさせて頂ければと思います。

 誤解している人が多いのですが、そもそも、ネットビジネスは自由度がとても低いビジネスです。空間に制限がない分、無秩序になりやすい市場なので、規制を厳しくしなければお客様の信頼を失ってしまいます。さらに、ネットの画面が“1個”という、非常に競争が尖がりやすいマーケットなので、一度、力の強い会社がネット市場を牛耳ってしまうと、業界全体が従わざるを得ない状況になります。グルメサイトしかり、価格比較サイトしかり、旅行サイトしかり。利用者を圧倒的に誘導できるサイトができれば、当然、そこには企業も群がり、そして、儲かるようになれば、その運営サイトに出店してる事業者は、そこに作られたルールに従わざるを得なくなります。そして、そこには圧倒的な主従関係が生まれて、また厳しいルールが乗っかってくるわけです。
 そういう事情を考えると、そもそもネットビジネスに「自由はない」と考えたほうが、むしろ自然と言えます。今回、「楽天市場は厳しい」と思ったネットショップ運営者も多いと思いますが、おそらく、Amazonのルールのほうがムチャなことをやっている気がしますし、グーグルの検索エンジンのスパム行為に対するペナルティのほうが、もっと非人道的な気もします。さらに、薬事法に対する規制や、上場企業に対する規制等、実は商売というのは、常に“理不尽なルール”によって売り手側が規制されるものなのです。

 このような“理不尽なルール”を常に出店者側に科すのは、商売の原理原則が、お客様が第一優先だからです。お客様が離れてしまうと、売上が落ちてしまうので、当然、出店者も減ってしまいます。そうならないためにも、お客様が不便だと思ったことに対して、モール側は徹底して排除していく必要があります。
 例えば、リアルなショッピングモールで『看板やのぼりを通路に出すな』というルールのお達しが出た場合。モール側としては、そのような販促物にお客さんがぶつかってはいけない、もしくは、通行の妨げだと思ったから、そのような規制を設けていると思います。しかし、出店者側にとったら、「なんで、そんなことも許さないんだ!」「売上が落ちるだろ!」と大騒ぎすると思いますが、それは売り手側の事情であって、お客様の都合でもなければ、モール側の都合でもないわけです。特に人気のショッピングモール側にとったら「だったら出て行けよ」という話になるので、ここでもやはり、主従関係によって統制が取られてしまいます。

 今回の罰則制度に関しても、やはり楽天側は出店者を懲らしめようとか、いじめてやろうとか、そういう意味でやっているわけではないのは当然です。お客様中心の、より良いショッピングモールを作るためにやっている制度なので、楽天市場が今後、お客様に必要とされるサイトを構築していくのであれば、致し方ないルール設定なのではないかと思います。おそらく、この「罰則」という言葉の響きが、なんとなく出店者側を不快にさせてしまい、今までのように楽天市場がグイグイと売上を伸ばしていない現状が重なって「不満」となって噴出している面が大きいのではないかと思います。

 加えて、楽天市場側にも、ある程度、退店する店舗が出てきてもいいという覚悟もあると思います。
 むしろ、それによって質の悪い店舗が減り、楽天内検索で、類似商品がゴチャゴチャ出てくるぐらいだったら、商品点数は減ってもいいんじゃないかという考えも、おそらくよぎっているとは思います。言葉は悪いですが、増えすぎた店舗数を間引きしていく意味では、このような罰金制度は、お客様側だけではなく、楽天市場側にとっても、都合のいいルールなのかもしれません。

 さて、そうなると、この罰金制度が、楽天市場側にどういう影響が与えられるかと言えば、あんまり大きな影響はないような気がします。毎度のことですが、「楽天市場、ふざけんじゃねぇ!」と大騒ぎしている店舗というのは、やはり楽天市場が大好きだから大騒ぎしているケースが多いんですね。好きでも何でもなければ、「とっとと退店してやるよ、ボケ」と言って出ていっていますから。文句を言う人に限って、ルールや秩序を守って、優良なネットショップを運営し続けるのが、いつもの“楽天市場が強引なルールを作って、店舗が大騒ぎする”のお決まりの結末パターンだったりします。
 仮に、より一層、厳しいルールを設けたとしても、クオリティの高いネットショップの運営ができる会社は、楽天市場でのネットショップ運営を続けると思います。そうなると、そのクオリティについていけなくなった、ダメ店舗がどんどん退店していくので、むしろ、これは真面目にネットショップを運営してきた企業にとったら、それなりに追い風になると言ってもいいと思います。ただ、現状、ヤフーやAmazonが突っついている状況なので、売上には、そんなに露骨な追い風にはならないと思いますが、自由が奪われた分、秩序は保たれて、良質なショッピングモールになっていくのではないかと思います。

 それに、楽天は過去に外部リンク禁止や課金制度の導入など、結構、ムチャな制度をいきなりぶち上げては、出店者側とガチンコで喧嘩になることが度々ありました。でも、振り返れば、それらが集客の原資になっていたり、秩序の保たれたショッピングモールになっていたりするので、楽天のこの手の「手厳しいルール」に関しては、そんなに大きなハズレがありません。こういっては何ですが、楽天市場の海外戦略よりは安心して見てられるところがあります。だから、今回のケースも、楽天市場の出店者にとったら、数年後には「やってよかったよね」的な話に繋がっていくのではないでしょうか。

 それよりも、この「罰則制度」と「楽天市場のネットショップの売上が落ちている」という現状を、ゴチャゴチャに考えてしまう人が多いことのほうが、大きな懸念だったりします。先述したように、Amazonとヤフーが攻勢をかけているので、楽天市場の売上がやや鈍化している店も多いと思います。そこに、この罰則制度の話が飛び出してきたので、「もうこんなショッピングモール嫌だ!」と思ってしまう人が多いのも、気持ちはわかります。
 しかし、それでも私は、楽天市場を飛び出してしまうのは早計だと思います。商材には楽天市場だから売れる商材と、そうでない商材というものもあり、同じように、自社サイトだから売れる商材と、そうでないと売れない商材というものがあります。もっと言ってしまえば、経営者の資質や性格の問題も大きいと思いますし、社内体制からして、楽天市場向けと、自社サイト向けと、これまた、いろいろな要素が絡んでくるので、ネットショップの運営スタイルに関しては、“一概には言えない”という状況になってしまっているところがあります。だから、一時の感情や状況だけに捕らわれずに、冷静な判断をしなくては、不安だけ煽られて、どっちつかずの行動を取ってしまうところがありますので、冷静なジャッジをする必要があるとは思います。

 それに、ルールが厳しいとか、自由がないとか、そういう文句が出ないぐらい、自社サイトの世界には、もっと厳しい現実が待ち受けているのも事実です。例えるのなら、日本の社会で暮らすために法律を守らなくてはいけないけど、サハラ砂漠のど真ん中に放り出されれば、法律はないし、自由だけど、生きていけない・・・というように、ルールがあったほうが、まだマシだと思うシーンに度々出くわすと思います。先述したように、自社サイトは、売り方やテクニックの問題以上に、商材や経営者の気質に左右されるところがあるので、慎重に判断しなくてはいけないし、ちょっと自社サイトの成功事例が身近な人で出ただけで、他の業種や様々なネットビジネスを検証しているわけでもないのに、迂闊に「お前も自社サイトやれよ」とは、私自身も言えないところがあります。

 しかし、それでも、自社サイトには、楽天市場のような「煩わしさ」がないのも事実です。そして、軌道に乗れば、楽天市場に出店しているような「不安」がないというのも利点と言えます。先ほどのたとえ話ではありませんが、サハラ砂漠に放り出されたら死んでしまうのかもしれませんが、そこに井戸を掘り、家を建てて、家畜を飼い、畑を耕して、そして家族を作り、町を作り、自分自身が“王様”になれるのであれば、こんなに楽しいことはありません。

 そういう意味も込めて、最後に宣伝になって申し訳ありませんが、自社サイトでの売り方をまとめた、私の著書でも一読してもらえればうれしく思います。ええ、お願いだから、買ってくださいな。

■楽天にもAmazonにも頼らない!自力で売上がドカンと伸びるネットショップの鉄則

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楽天市場等のネットビジネスで
多くの受賞履歴
あり。

大企業、中小企業問わず、実店舗ビジネス、ネットビジネスのアドバイスを行なう経営コンサルタント。有限会社いろは代表取締役。大学卒業後、雑誌編集者を経て観光牧場の企画広報に携わる。楽天市場等で数多くの優秀賞を受賞。現在は雑誌や新聞に連載を持つ傍ら、全国の商工会議所や企業等でセミナー活動を行い、「タケウチ商売繁盛研究会」の主宰として、多くの経営者や起業家に対して低料金の会員制コンサルティング事業を積極的に行っている。特にキャッチコピーによる販促戦略、ネットビジネスのコンサルティングには、多くの実績を持つ。著書に『売り上げがドカンとあがるキャッチコピーの作り方』(日本経済新聞社)、『御社のホームページがダメな理由』(中経出版)、「会計天国」(PHP研究所)ほか、多数。
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