1月11日より日本経済新聞出版社から『8歳からの内定獲得術』という本を出すこととなりました。
本書では、内定を3つ以上獲得した100名と、内定の獲得が0個だった100名にアンケート調査を実施。内定獲得と子育てに、どのような関連性があるのか、マーケティング視点で解説しています。今回は、その内容の触りの部分を紹介させていただきます。
まず、就活には「人に好かれる」という条件が必要になります。どんなに学歴が高くても「こいつ嫌だな」と思われる人は、当然、企業から採用されにくくなります。就活に“面接”というテストがある以上、どうしても、人に好かれる能力は必要であり、これを強化することが“就活力”を鍛えることに繋がっていくのです。
では、“人に好かれる”という能力は、どうすれば鍛えられるのでしょうか。 もちろん、これらの能力は持って生まれた気質や才能、家庭環境の影響が大きいとは思います。しかし、私はここであえて、「部活動」という古典的なコンテンツにフォーカスしたいと思います。
今回、「8歳からの内定獲得術」の執筆において、部活動と就活における関連性を調査しました。 その結果、明らかに体育会系の部活動が、文科系、帰宅部の学生に比べて、就活力が高いことが分かりました。
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文系部活
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体育会系部活
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帰宅部
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内定3 中学
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36
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56
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8
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内定3 高校
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37
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47
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15
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内定0 中学
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44
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33
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21
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内定0 高校
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53
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14
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30
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内定3の体育会系の部活への入部は、中学が56%、高校が47%と、過半数に近い人が、なんらかの体育会系の部活動に入部していることが分かります。対して、内定0の体育会系の部活は中学で33%、さらに高校になると14%と、極端に体育会系の部活に入部している数が減少していることが分かります。さらに、上記のデータで高校の帰宅部だけを比較すれば、内定0が内定3の2倍以上も多いことが分かります。
このように、世間で言われる「体育会系の部活=就活に強い」というのは、今回のリサーチ結果からも明らかとなりました。しかし、ここで誤解して欲しくないのは、体育会系の部活が「根性がある」「爽やかだから」等の、抽象的な理由で就活力が強くなっているとは限らないという点です。
体育会系の部活動では、どうしても競技の性格上「人に好かれる」というコミュニケーション能力が必要になります。 チームプレイの競技では、仲間同士の潤滑なコミュニケーションが必要ですし、個人競技でも先輩や後輩たちとの関わり方が競技生活に大きな影響を与えます。また、部活動特有の理不尽な指導や、対人関係の悩みは、その問題をクリアした際に、お金では買えない「人との付き合い方」を学ぶことに繋がっていきます。
このように、部活動は現代において、唯一、子どもが「人に好かれる」という能力を鍛えられる場でもあるのです。特に最近では、企業側は対人関係でストレスに強い学生を採用したがる傾向にあります。精神疾病が大きな問題となっている企業では、やはり「人に好かれる」ことが必要とされる「部活動」というコンテンツを重視しているところが大きいと思います。
ここでは体育会系だけフォーカスしてお話していますが、当然、文化系でも、「人に好かれる」というコミュニケーション能力が鍛えられる部活は多々あります。定期的に発表会やコンテンストがある吹奏楽部や演劇部、美術部や化学部でも、ひとつの目標に向かって、ひたむきに全力で頑張る部活動であれば、内容を問わず、「人に好かれる」という能力は鍛えられると思います。
小さい頃から子どもを学習塾に通わせて、一流の中学校、一流の高校、一流の大学に行かせることを主眼に置いている親は多いと思います。しかし、最近では学業を優先するあまりに、拘束時間の長い部活を敬遠させる親が増えていると聞きます。 もちろん、学業に集中することで、その子は一流の大学に入学できるかもしれません。しかし、学歴という“資格”を手に入れても、肝心な「人に好かれる」という能力が高くなければ、結果的に就活では面接で落とされてしまいます。
「就職に強い大学はないが、就職に強い学生はいる」
ある進学校の教師が言った言葉です。 この言葉の通り、就活に負けない子どもに育てるためには、学業だけではなく「人に好かれる」という能力を鍛えるために、ある程度、親が子どもを導いてあげる必要があるのかもしれません。
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