小冊子の配布は企業にとってすごく効果的なPRになることをご存知ですか?
チラシやDMはすごく宣伝の要素が強くなってしまいがちです。それに対して、小冊子は販売しようとしている商品情報以外の役に立つ話を書けば読んでもらいやすくなり、さらに信頼してもらいやすくなる効果があります。
読んでもらって、商品への興味関心を持ってもらったり、新しい使い方を発見してもらって購入につなげたりするのが理想です。
会社や個人が、ある程度のボリュームがある情報を多くの人に伝えたいとき、小冊子を作製すると効果的です。商品の売り込みだけではなく、読者が知りたがっている情報を推測して一緒にまとめるのがポイントです。
本のような体裁にすることで、チラシやパンフレットよりも捨てられづらくなりますし、目を通してもらいやすくなります。
小冊子はチラシやDMなどよりも情報量がはるかに多く、制作するのにも時間とお金がかかります。そのため、間違った方向性のまま気がつかずに完成させてしまうと、損失が大きくなってしまいます。何千部や何万部もの小冊子を印刷したあとに、まったくレスポンスがとれないとわかっても手遅れです。
ここではありがちな失敗をさけるために、小冊子の印刷と製本に関する基本知識と注意点を紹介します。
小冊子の特徴とメリット
小冊子は実は、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が「5~48ページの不定期刊行物」と定義しています。しかしビジネスや趣味の領域では、ただ「多くの情報が掲載されている紙の束(たば)を、本より簡素に綴(と)じたもの」と理解されています。
媒体としての小冊子の特徴としては、
・簡易性と高級感
・高い保存性
・情報の保有量の多さ
という3つのメリットがあります。
簡易性と高級感は矛盾する性質ですが、小冊子はそのどちらも持っているのです。小冊子は、普通のコピー機を使って手づくりでつくることもできます。一方で、チラシやDMと比べればしっかりとしている印象を与えることができます。
高い保存性は、小冊子の物理的な特性から生まれました。チラシ10枚を保存するにはバインダーに閉じたり箱のなかにしまったりする必要がありますが、小冊子ならそのままブックラックや本棚に立てかけることができます。
保存性が高いと、捨てられてしまうことが減り、時間が経過してから見直してもらえる可能性が高くなります。本棚に立てかけておけば、いつでも小冊子を手にとって内容を確認することができるのです。
そして小冊子は複数枚のページでつくるので、多くの情報を載せることができます。
小冊子の印刷前に決めること
小冊子を印刷するまでの基本的な流れをまとめています。流れを把握してスケジュールをたてて取り組んでいきましょう。
ターゲットの決定
小冊子をどんな人たちに配布するのかを考えます。性別・年齢・在住地域・職業・収入・趣味嗜好など、できるだけはっきりと人物像を決めてください。もし思い浮かぶようなら、適切な知り合いを思い浮かべるのもよいでしょう。
その決めた人にわかりやすく伝えるためにはどのようなことを、どう書けばよいかを考えながら執筆します。
原稿とデザインの制作
伝えたい相手を決めて、その人たちがどんな情報を知りたがっているかを考えながら小冊子の原稿を執筆します。役に立つ参考情報、お客様の声・導入事例、商品の紹介、購入方法や連絡先などを小冊子にまとめることが多いです。
デザインは読んでもらうために工夫してください。文字だけしかない小冊子よりも途中に写真やイラストや図表などが含まれていたほうが読んでもらいやすくなります。
サイズや用紙や綴じ方を決める
小冊子のサイズや用紙や綴じ方の種類でも読者に与える印象は異なります。右綴じなのか左綴じなのかを内容に応じて選びます。
印刷方法を選択
ネットの印刷サービスもしくは印刷会社に発注する、自らプリンターで印刷するなど、いくつかの方法があります。外注するとお金はかかりますが、品質の高いものができあがりますし、作業する手間がなくなります。自作で印刷すると手間がかなりかかりますが、お金を節約できます。
小冊子を自分で印刷する方法
小冊子を100部や1,000部といった単位で作製するのでなければ、個人が1人でつくることができます。たとえば、A3の用紙を横にして半分に折り曲げものを2枚重ねただけでも「表紙+6ページ+裏表紙」の計8ページのA4版小冊子になります。
ただ、ビジネスで使えるクオリティにするためには入念な準備が欠かせません。
あまり考えずに作って、安っぽい印象を与える小冊子になってしまうと効果が下がってしまいます。
そこで手づくり小冊子をビジネスレベルにまで高めるには、「素材集め」と「編集」と「印刷」という3つの作業が欠かせません。ここでは、仮で8ページの小冊子を作ると仮定して、どんな作業が必要になるかをご案内します。
素材集め
1人で小冊子をつくるということは、1人で複数人の役割をこなすことを意味します。そこで、まずは複数人で小冊子をつくる一般的なケースをみてみましょう。
小冊子の製作作業は駅伝に似ています。クライアント(小冊子をつくろうと決めた人)が小冊子のイメージをつくり、文章や写真やイラストなどの素材を集め、編集者に渡します。編集者は編集をしてデザイナーに見た目を決めてもらいます。デザインしたデータを印刷会社に渡し、小冊子が刷られ完成します。
まず素材集めですが、A3用紙2枚でつくる「表紙+6ページ+裏表紙(計8ページ)」の小冊子でも、これだけの素材が必要になります。
・表紙:タイトル、写真・イラスト、前文・キャッチコピー
・6ページ:記事、写真・イラスト、見出し
・裏表紙:編集後記、製作者の連絡先、写真・イラスト
用意する素材は、少なすぎても多すぎてもいけません。素材が少なすぎてスカスカのものなら、そもそも小冊子ではなくてチラシやDMハガキなどに切り替えたほうがよいかもしれません。
逆に素材が多すぎると情報を詰め込みすぎることになり、文字や写真やイラストを小さくしなければならなくなり、読みづらくなってしまいます。
読まれやすそうな文字サイズや余白のとりかたをイメージしながら、レイアウトを決めていきます。たとえば高齢者を対象にするときには、文字サイズや余白は大きめになるでしょう。
編集
小冊子は複数ページで構成されるので、編集作業が必要になります。編集とは、文章や写真やイラストなどの素材の配置を考えたり、見出しをつけたりする作業です。文章をより伝わりやすくなるように書き直したり、順番を入れ替えたりすることもあります。
小冊子が「料理」だとすると、素材は「食材」で、編集は「調理と盛り付け」になります。1人で小冊子をつくる場合、集めた素材をパソコンソフトでデータ化しなければなりません。
デザイナーが関与して制作する場合には、イラストレーター、フォトショップ、インデザインなどのソフトを利用して制作することが多いですが、1人でつくる場合にはワードやパワーポイントなどを使って制作するのでもよいでしょう。
印刷
パソコンソフトで小冊子のデザインがデータ化できたら、あとはネット印刷会社にそのデータをメールで送信するか、専用の管理画面からアップロードするだけで発注できます。ただ、プリンター・複合機やコンビニ印刷を使えば、印刷も自分1人で行うことができます。
ホチキスまで自動化!
小冊子を印刷に便利なプリンター・複合機
個人が小冊子の印刷を1人で行うとき、最も安上がりな方法はプリンターの活用です。プリンターの価格は年々下がってきており、個人でも高機能なものに手を出しやすくなっています。
たとえばエプソンは「冊子づくりにおすすめのプリンター」として、同社のEW-M770T/TWというプリンターを紹介しています。価格は約6万円です。コスパが高く、A4カラーを月300ページ印刷しても、1年間カートリッジ交換なしで使うことができます。
EW-M770T/TWをパソコンに接続すると、「ブックレット印刷」をすることができます。ブックレットとは小冊子とほぼ同じものです。
小冊子は、小説や漫画は表紙の右側で綴じなければなりませんし、横書きのパンフレットや論文などは表紙の左側を綴じなければなりません。ブックレット印刷機能を使えば、画面で選択するだけで正しい綴じ方ができます。
複合機を使えば、小冊子印刷がさらに楽になります。A4用紙でつくった元原稿を普通にコピーする要領で複合機に読み込ませると、A3を横置きにして半分に折った「中綴じA4版小冊子」に製本されて出てくるのです。中綴じとは、見開きページの真ん中を金具(ホチキスのようなもの)でとめる製本方法です。
たとえばA3用紙を2枚使って半分に折って小冊子をつくると「表紙+本文6ページ+裏表紙」の計8ページのA4版小冊子になります。1枚目のA3には「表の左側に1ページを、表の右側に6ページを、裏の左側に表紙を、裏の右側に裏表紙を」印刷しなければなりません。
これを低機能のコピー機で印刷しようとすると、コピー機のガラス面に元原稿を配置するのも大変ですし、さらに両面コピーするとなると適切な紙の向きにしなければなりません。これはとても面倒な作業です。無事印刷できたとしても、今度は印刷物を2つ折りにして、ホチキスでとめていかなければなりません。高機能な複合機は、印刷物の2つ折りやホチキスとめも含め、すべての作業を代行してくれるのです。
ただ価格は100万円をゆうに超えてしまいます。高額なため、多くの企業が購入するのではなくリースで済ませているほどです。このような100万円以上するような高額な複合機を誰でもすぐに使える方法があります。それが次の章で解説する、コンビニ印刷を使った小冊子づくりです。
プリンターがなくてもコンビニ印刷できる!
ネットプリントとは?
高性能の複合機があれば個人でも小冊子を印刷することができます。しかし高性能複合機は値段が高く、個人で買える機械ではありません。この課題解決に動いたのが大手コンビニです。
セブンイレブンは「マルチコピー機を使えば、小冊子プリント機能であっという間にコピー本がつくれます」とPRしています。売りは、小冊子を1冊からつくれることです。
作業の流れは次のとおりです。
パソコンでデータをつくる
たとえばA3用紙2枚を使って「表紙+本文6ページ+裏表紙」の計8ページのA4版小冊子をつくるとします。その場合、まずは作成者が計8ページ分のページをパソコンでつくり、JPEGまたはTIFFまたはPDFのファイルでUSBメモリに保存します。
コンビニに行く
次にUSBメモリを持ってセブンイレブンなどのコンビニに行きます。セブンイレブンのコピー機で小冊子を印刷するための操作方法は以下のとおりです。
マルチコピー機の「普通紙印刷」を選択し、USBメモリを差し込み、データを読み込ませます。画面にUSB内のデータがすべて出てくるので、小冊子にするデータを選択します。
その後、紙の大きさなどを指定し「小冊子」印刷を選択すると、印刷がスタートします。すると次のように印刷されたA3の紙が出てきます。
・1枚目のA3には、表の左側に1ページが、表の右側に6ページが、裏の左側に表紙が、裏の右側に裏表紙が印刷されています。
・2枚目のA3には、表の左側に3ページが、表の右側に4ページが、裏の左側に2ページが、裏の右側に5ページが印刷されています。
これで「表紙+本文6ページ+裏表紙」小冊子の製本前の印刷物が完成しました。
自宅で手づくり製本する
セブンイレブンのマルチコピー機では「A3を2つ折りにする」ことと「A3の真ん中にホチキスとめする」ことはできません。そのため、印刷したものを自宅に持ち帰り、自力で製本していくことになります。
他のコンビニでも同様のサービスを提供しています。また、USBメモリを持っていないという方はネットプリントという方法もあります。
ネットプリントは専用のウェブサイトから印刷したいデータをアップロードして、発行されたIDをコンビニのコピー機に入力すると印刷できる仕組みです。
用途別のオススメの解像度は?
クオリティの高い小冊子をつくりたい場合、挿入する写真やイラストなどの解像度を意識したほうがいいでしょう。
印刷物のなかで使われている写真やイラストがぼやけていることを見た経験はありませんか。ぼやけてしまうのは適切な解像度の画像データを使えていないことが原因です。
解像度とは、画像の密度のことをいいます。1インチ(25.4ミリメートル)四方の画像を100個のマスで区切って表現すると、解像度は10dpiと表記されます。dpiの数字が大きいほど、鮮明な画像となります。
小冊子をフルカラー印刷で作製する場合、300~400dpiが推奨されています。400dpiは「かなり解像度が高い」といっていいレベルです。というのも、パソコンでみるWebサイトの画像の解像度は70~100dpiぐらいで支障はありません。またポスターでも200dpiもあれば違和感を持たれないでしょう。
小冊子の場合、写真を紙に印刷するのでどうしても画質が落ちてしまいます。それで元の写真の解像度を高めておいたほうがいいのです。
小冊子の用途別のオススメの用紙は?
小冊子のクオリティは、使用する用紙で大きく変わってきます。手にとってもらったときに読み進めてもらえるかどうかは第一印象で決まってしまうことが多いです。そのため、見た目や紙の質感は、原稿やデザインと同様に小冊子の効果に関係してきます。
さまざまな用紙のタイプと特徴を紹介しますので、あなたの想定している読者の人にはどの用紙が適しているかを考えてみてください。
コート紙
コート紙は光沢があり、手に持った人が一瞬で「コピー用紙で製本したものではない」と感じることができます。小冊子にプレミアム感を出すことができます。
マット紙
マット紙はあえて光沢を落としているのが特長です。デザイン性が高い小冊子に向いているかもしれません。またマット紙は光を反射しないので、印刷した文字が読みやすい長所もあります。値段もそれほど高くありません。
上質紙
上質紙は、コピー用紙やノートに使われている紙で、あまり高級感はありません。ただ、表面がざらざらしているのでボールペンはもちろんのこと、鉛筆でも書き込むことができます。会議の資料用の小冊子には上質紙が向いているかもしれません。
アートポスト
アートポストはコート紙の高級バージョンです。コート紙よりも厚みがあり、小冊子にしたときどっしりした手応えがあります。客単価の高い商売などで高級感を演出するために使われます。
マットポスト
マットポストはマット紙の高級バージョンです。マットポストも厚みがある紙なので、元々高い質感を誇るマット紙よりさらにプレミアムな小冊子をつくることができます。
読者に与える印象の違いという要素だけでなく、配布する方法によっても選ぶべき用紙は違います。自宅に直接郵送する場合、展示会などで配布する場合、店頭で配る場合など、それぞれで耐久性などに差をつけてみるのもよいでしょう。
ホチキス?無線綴じ?小冊子の綴じ方の種類
用紙の種類だけでなく、綴じ方でも読者に与える印象は変わります。また、制作したページ数に応じて採用できる綴じ方が変わってくるので注意が必要です。
ここでは、どんな綴じ方があるのかをご紹介します。
中綴じ製本
中綴じ製本は最も基本的な小冊子の綴じ方です。半分に折った紙を重ねて、その折り目に針金(いわゆるホチキスのようなもの)でとめます。とめる前は紙を重ねただけの状態なのに針金で綴じた瞬間に小冊子になります。それは針金が中心になることで、1枚に紙に左右と表裏が生まれるからです。1枚の紙に左右と表裏ができると、小冊子の重要な機能であるページが生まれるのです。中綴じ製本の代表格は雑誌です。
中綴じ製本でつくる小冊子は、表紙と裏表紙も1ページと数えると、全ページ数は必ず4の倍数になります。それは1枚の紙に4ページ印刷されるためです。
「4の倍数ページでつくるしかない」というルールは、中綴じ製本で小冊子をつくるとき悩みの種になるでしょう。たとえば情報量が多すぎて、表紙と裏表紙を含めて計8ページでは収まりきらないとなったら、残った情報を捨てるか、一気に4ページ足すか、選択しなければなりません。中綴じ製本では、編集作業がとても重要になります。
中綴じ製本にはもうひとつデメリットがあって、それは分厚い小冊子をつくれないことです。針金を貫通させるという単純な構造が災いして、針金が貫通できないと製本できないのです。辞典が中綴じ製本でできていないのはそのためです。
デメリットはあるものの、もっとも一般的かつ簡易的な綴じ方ですので、多くの場合、中綴じを採用することになります。
無線綴じ製本
無線綴じ製本は、針金の代わりに接着剤で紙を綴じたものです。接着剤で紙と紙をくっつけるので、いくらでもページ数を増やして厚くすることができます。
無線綴じ製本で「表紙+6ページ+裏表紙」の計8ページA4版小冊子をつくるときは、A3用紙1枚とA4用紙2枚の計3枚が必要になります。この3枚の構成は次のとおりで、少し複雑です。
・1枚目(A3):表面の左側=背表紙、表面の右側=表紙、裏面の左側=6ページ、裏面の右側=1ページ
・2枚目(A4):表面=2ページ、裏面=3ページ
・3枚目(A4):表面=4ページ、裏面=5ページ
印刷できたらA3を横置きにして半分に折り、その間に2枚のA4を挟み込むのです。接着剤は、A3の1ページと6ページの中間線と、A4の左側面につけて合体させます。
無線綴じ製本は、A4用紙を増やしていけば、かなり厚い小冊子をつくることができます。ある程度厚みが出てくると、「本の背」ができてきます。無線綴じ製本での増ページは2ページごとなので、中綴じ製本の4ページごとよりは編集がしやすいでしょう。
無線綴じ製本は針金(ホチキス)も糸も使わず接着剤だけでつくるので、個人が小冊子の製本に挑戦するには、ある程度の技術が必要です。
接着剤を必要な箇所以外につけないように注意する必要がありますし、また各ページをしっかり合わせるのにもコツが要ります。
無線綴じ製本でつくった小冊子のデメリットは、開いたときに中央部分を完全に平らにすることができないことです。ページの奥がみえづらくなってしまうのです。見開きページで1枚の写真をみせるときは不向きです。
無線綴じ製本は文庫本などで使われています。
あじろ綴じ製本
あじろ綴じ製本は無線綴じ製本の改良版という位置づけです。接着剤のつきをよくするために、本の背の裏側に切れ目を入れています。切れ目に接着剤が浸透していくので、綴じの強度が増すわけです。あじろ綴じ製本でつくった本のほうが、無線綴じ製本でつくるより長持ちします。
ただ、手間がかかるあじろ製本は、小冊子ではほとんど使われることはありません。ページ数がすごく多くて耐久性や保存性に優れた製本方式を選びたいという方には向いています。
平綴じ製本
平綴じ製本は、無線綴じ製本の要領でページをつくってから、接着剤ではなく針金(ホチキス)で全ページの奥をまとめてとめます。そのため、ページをレイアウトするときに、奥側(本の背の方)に針金用の余白を用意しておかなければなりません。その分、印刷できる面積が狭くなってしまいます。
平綴じ製本は教科書やジャンプやマガジンなどの少年週刊誌で使われています。小冊子制作でも平綴じ製本は有効です。
糸綴じ製本
糸綴じ製本は、高級な綴じ方です。小説などの単行本や百科事典などに使われます。糸綴じ製本ではまず、中綴じ製本の要領で「ある程度のページの束」をつくります。それを針金でなく糸で綴じていくのです。そして「ある程度のページの束」をいくつかつくって、それを重ねて接着剤で合体させます。
糸綴じ製本も無線綴じ製本同様に、本をかなり厚くすることができます。糸綴じ製本も小冊子ではほとんど使われません。
小冊子の印刷ページ数はコストに大きく影響する
小冊子づくりのコストをできるだけ抑えたい、という要望は強いでしょう。小冊子のコストに大きく影響するのがページ数です。ページ数が増えるほど集める情報を多くしなければなりませんし、紙も多く使いますし、印刷する量も増えますし、製本も手間がかかるからです。
小冊子づくりのコストを抑えるには、「余計なページはつくらない」ことが肝要です。
先ほど綴じ方のところでも紹介しましたが、中綴じ製本は、4ページ増やすか、4ページ減らすかの選択になるため、小冊子の編集者は頭を悩ますことになるでしょう。
たとえば小冊子をシリーズものにして定期的に作製する場合、ある号は中綴じ製本にしたけど、別の号は別の製本を採用するといった事態はさけたいところです。シリーズ小冊子の統一感が薄れてしまうからです。
増ページ・減ページが容易なのは、平綴じ製本や無線綴じ製本です。これなら2ページ増やすか、2ページ減らすかの選択で済みます。4ページ単位で増減させないといけない中綴じ製本より楽です。
雑誌や本などの商業誌であれば広告を入れる「逃げ道」があるので、コストの問題を無視すれば、増ページ・減ページはそれほど難しくありません。
しかし、多くの場合で会社や商品を小冊子にはそのような逃げ道がないので、製本方法は慎重に選択する必要があります。
両面印刷で上下逆になっちゃった?
小冊子印刷の設定で重要なポイント
自分でコピー機を使って手づくりで印刷した上下が逆になってしまうことは、「小冊子づくりあるある」です。
特に中綴じ製本は、印刷さえしてしまえば製本作業自体は単純なので、同人誌をつくる人たちに人気なのですが、製本作業が単純な分、印刷が複雑になります。
「何十枚も刷ったあとにページ割が狂っていた」ということを回避するには、次の2つの方法があります。
高性能の複合機を使うことで、かなり確実に印刷ミスを防止できるでしょう。印刷を開始するとき、作業者はページの順に複合機に読み込ませていくだけでいいからです。それを複合機がページ割を計算して、表面の左側、表面の右側、裏面の左側、裏面の右側に正しいページを印刷していくのです。
コンビニに設置してある高性能コピー機にもこうした機能を搭載したものがあるので、積極的に活用してください。
2つ目のミス防止策はシミュレーションをすることです。自宅のプリンターを駆使したり、近所のコンビニに単純機能のコピー機しかなかったりした場合、試し刷りしてから本番刷りに移行したほうがいいでしょう。一部だけなら失敗してもすぐにやりなおせます。
同人誌の制作におすすめのソフトと印刷方法は?
同人誌は数ある小冊子のなかでも、かなり本に近い存在です。ページ数が多くてデザイン性が高く、編集も緻密な作品が多い傾向にあります。それだけに個人やグループで同人誌(小冊子)を「手づくり」するときでも、パソコンソフトはマストアイテムです。
自分で同人誌をつくるときに使えるソフトを紹介します。
Adobe Illustrator
アドビのイラストレーターは、出版社で書籍や雑誌を作製しているプロが使っているソフトですが、一般にも広く普及して、家電量販店でも購入できます。
イラストレーターがあれば「どのような小冊子でもつくることができる」といっても過言ではありません。写真加工、イラスト作成、記事の編集、構成を1本のソフトで、しかもすべて高レベルで実施することができます。
ただ、イラストレーターの操作は最低限の知識が必要です。機能が多すぎて直感で操作できるものではありません。イラストレーターを初めて使う人は、基本操作を解説した本を1冊買い、手元に起きながら作業することになると思います。
そしてイラストレーターを自由自在に動かすには、有料の講習会に参加して学んだほうが近道かもしれません。
Microsoft word
マイクロソフトのワードを使っても、小冊子をつくることができます。これは最も手軽な方法ですので、手順を詳しく解説します。
ワードの「ページレイアウト」から「ページ設定」を開きます。「余白、用紙、レイアウト」の設定を変更できる画面が現れるので「用紙」をクリックします。
「用紙」のなかの「用紙サイズ」を「A4」にします。次に「余白」をクリックして、「印刷の向き」を「横」、「印刷の形式」を「本(縦方向に谷折り)」にします。続いて「印刷」画面に行き、「両面印刷(短編を綴じる)」を選択します。
これで、A4用紙1枚を横にした形で、表面の左側、表面の右側、裏面の左側、裏面の右側の4ページが印刷されます。
完成する小冊子は、A4を横にして半分に折った大きさになります。
Pages
マックのページズでも同じように小冊子をつくることができます。しかしページズで編集・デザインして、印刷会社に印刷をする場合、ワードの形式に変換しなければならないときがあります。そのためマックユーザーは、印刷会社に事前に相談しておく必要があります。
Adobe InDesign
アドビのインデザインは、編集に特化したソフトなので、小冊子も簡単につくることができます。アドビ製品にはイラストレーターもありますが、インデザインのほうが本の編集には適しています。
ただ小冊子のレベルでれば、使い勝手はインデザインもイラストレーターもそれほど変わりません。将来、本格的な書籍をつくる予定がないのであれば、写真やイラストの加工・作成が得意なイラストレーターを使ったほうがよさそうです。
イラストレーターやインデザインはある程度学習しないと使いこなせないですが、本格的な小冊子を制作するには便利です。
小冊子の入稿データはどんな形式?
小冊子の編集とデザインを自分で行い、印刷だけを印刷会社に頼む場合、データを印刷会社の渡す(入稿する)作業が発生します。
印刷会社によって、データの形式が異なってくるので、事前にしっかり打ち合わせしておきましょう。
PDF形式は、最も確実な入稿データ形式です。恐らく、PDF受け付けできない印刷会社はないはずです。
ただPDFデータは修正することができないので、一度PDFデータを印刷会社に渡してしまうと、小さな直しが発生したらもう一度PDFデータをつくり直して印刷会社に送信しなければなりません。
イラストレーター形式の小冊子データを印刷会社に渡せば、小さな直しが発生したときでも、電話やメールで印刷会社の担当者に連絡をして、たとえば「『私が』を『僕が』に修正してください」と伝えれば、担当者に修正してもらえます。
ほとんどの印刷会社がイラストレーターのデータ形式(.ai)に対応しています。入稿する前にはアウトライン化を求められることがあります。印刷するときにソフトのバージョンやPCの環境の違いなどで文字の見た目が変わるのを防ぐための措置です。
ワード形式は、PDFに次いで無難なデータ形式です。ワードが使えない印刷会社はないでしょう。ただ、PDFやイラストレーターのデータ形式のほうが見た目のズレを防げます。
納期によって大きく金額が変わる小冊子の印刷
小冊子の印刷と製本を印刷会社に依頼したら、納期はどれくらいになるのでしょうか。
印刷会社によってまちまちなのですが、目安としてネット印刷大手ラクスルの納期をみてみましょう。
ラクスルならA4中綴じ製本の小冊子であれば、最短、小冊子のデータを受け付けした日から1営業日で完成品を出荷します。出荷後の配送期間が2日かかっても、最短3日で会社または自宅に到着するわけです。
ただラクスルの場合、納期に余裕をもたせると、代金が安くなります。たとえば「A4中綴じ製本、8ページ、50部印刷・製本」を発注すると、1営業日での出荷は18,250円ですが、7営業日での出荷なら5,454円になります。料金に3倍以上もの開きがあります。そのため、スケジュールに余裕を持って制作を終わらせて発注すると無駄に高額を払わなくて済みます。
小冊子を印刷できるオススメの印刷会社
小冊子の印刷・製本を安心して任せられる会社として、ネット印刷をおすすめします。通常の印刷会社だと、営業の人と電話やメールのやり取りをしたり、料金の銀行振込をしなくてはならなかったりと、不便な点がありますが、ネット印刷ではWebで入稿できてクレジットカードで支払いがすぐに済むので便利です。
ネット印刷の代表的な会社としてラクスルという会社があります。多くの印刷会社と提携しているので、さまざまな印刷形式に対応してくれます。さらにラクスルは印刷・製本の料金を細かく設定していて、Webでリアルタイムに見積もり金額を確認できるので、予算を立てやすいです。
また、ラクスルのサイトはデザインがすっきりしていて、操作しやすいのも重宝する点です。毎回サイトを操作して発注することになるためサイトの使いやすさは重要です。